取り崩される見込みのない中小企業金融安定化特別基金につ
いて、緊急保証による欠損の補てんにも充当できるようにす
るなど、有効活用を図るよう経済産業大臣に対して改善の処
置を要求したものについての報告書(要旨)
1 制度の概要
( 1) 中小企業金融安定化特別保証制度の概要
平成9年秋以降、大手金融機関が相次いで破たんするなど金融面での不安定性が顕在
化して、健全な借り手に対しても金融機関の融資姿勢が厳しくなる、いわゆる貸し渋
りにより企業の資金繰り悪化が顕著となってきた。このような経済情勢や金融環境に
対応して、政府は、必要な事業資金の調達に支障を来している中小企業者に対して積
極的な債務保証を実行するため、臨時異例の措置として、中小企業金融安定化特別保
証(以下「特別保証」という。)制度を創設した。
特別保証制度は、10年10月から13年3月までの間に保証申込が行われて、30兆円の保
証枠に対して、28兆9437億余円の保証承諾が行われた。
国は、特別保証の実施に当たり全国52の信用保証協会(以下「協会」という。)の
基本財産として新たに必要となる所要資金について、全額国の補助金により賄うこと
とし、計2900億円を、都道府県等に補助金として交付し、都道府県等は同額を各協会
に出えんした。
上記の特別保証制度に係る都道府県等からの出えん金を協会の基本財産の一部とし
て別途に経理処理させるため、国は、10年12月に信用保証協会法施行規則(昭和28年
大蔵省・通商産業省令第3号)の一部を改正し、既存の基金とは別に金融安定化特別基
金(以下「特別基金」という。)を設けるとともに、特別保証に係る収支の状況を明
らかにした中小企業金融安定化特別会計(以下「特別保証会計」という。)収支計算
書を作成させることとした。そして、協会は、その定款について、特別基金は特別保
証の代位弁済、回収等による収支計算の結果生ずる特別保証会計の欠損にのみ充てる
ことができるなどとする改正を行った。
( 2) 経営安定関連保証制度及び緊急保証制度の概要
特別保証制度は、13年3月までの時限的な措置であったが、特別保証制度の後を引き
継ぐ制度として、経営安定関連保証制度が、中小企業者に対する円滑な資金供給を引
き続き確保するため、中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号。以下「保険法」と
いう。)の一部改正に基づき、従来あった倒産関連保証制度を拡充し、一定の要件に
該当する中小企業者を対象に、12年12月から実施された。
ていない中小企業者の資金繰りを支援するため、経営安定関連保証の要件を拡充して、
6兆円(後に20兆円に拡大)の保証規模の原材料価格高騰対応等緊急保証制度を創設し、
22年3月まで実施することとした。
さらに、国は、世界的な景気後退の中で資金繰りに苦しむ中小企業者をより一層支
援するため、21年4月に、保証規模を30兆円に拡大することとし、同制度の名称を「緊
急保証制度」とした(以下、原材料価格高騰対応等緊急保証及び緊急保証を合わせて
「緊急保証」という。)。そして、20年度中の緊急保証に係る保証承諾実績は、9兆1
810億円となっている。
国は、経営安定関連保証等の需要に積極的かつ弾力的に対応し、併せてその保証債
務の履行を円滑にするため、社団法人全国信用保証協会連合会(以下「連合会」とい
う。)に対して、12年度から経営安定関連保証等対策費補助金を交付している。連合
会は、同補助金を基に経営安定関連保証等対策費特別基金(以下「経営安定基金」と
いう。)を造成し、経営安定関連保証等に伴う協会の損失の80%を補償することとし
ている。国が12年度から19年度までに連合会に対して交付した同補助金の額は805億余
円となっている。そして、国は、緊急保証制度が創設されたことに伴い増大する協会
の損失を補償する財源として、20年度補正予算で、連合会に同補助金を542億余円交付
しており、20年度末の経営安定基金残高は845億余円となっている。さらに、21年度当
初及び補正予算において、連合会への同補助金計714億円が計上されている。
2 検査の結果
本院は、17年度決算検査報告の特定検査対象に関する検査状況に「中小企業金融安定
化特別保証制度の実施状況について」を掲記し、特別基金の相当部分が将来長期にわた
って取り崩されることなく協会に保有されることが見込まれる状況を踏まえて、中小企
業庁において、必要に応じて財政当局、都道府県等及び各協会と協議するなどして、特
別基金の最終的な処理方針を検討することが重要である旨の所見を記述している。
前記のとおり、世界的な金融危機から生じた景気後退により開始された緊急保証制度
に伴う国の財政負担も大きくなってきている。
そこで、17年度決算検査報告のフォローアップとして、経済性、効率性、有効性等の
観点から、特別基金が特別保証債務残高に対して適正な規模であるか、現在の経済情勢
て検査した。
( 1) 特別保証及び各協会における特別基金等の状況
10年度から13年度までの特別保証に係る保証承諾の実績は、172万余件、保証承諾額
28兆9437億余円となっている。19年度末におけるこの保証承諾された債務の状況は、
10万余件、保証債務残高7078億余円であり、保証承諾額に対して2. 4%まで減少してき
ている。代位弁済は、24万余件、代位弁済額2兆5093億余円であり、保証承諾額に対し
て8. 7%となっている。また、求償権の行使により協会が回収した額は、3558億余円で
あり、回収率は14. 2%となっている。
また、19年度末における協会ごとの特別基金の状況についてみると、52協会中、14
協会で特別基金の全額を取り崩している一方で、残りの38協会では計458億9024万余円
の残高がある。
( 2) 今後、協会に保有され続ける特別基金の試算額
過去の事故率8. 7%を参考に現下の経済情勢を考慮して、特別保証債務残高7078億余
円に10%の代位弁済が生ずるとして、将来発生すると見込まれる各協会の損失額及び
損失処理後の特別基金残高を試算すると、回収を考慮しなくても、代位弁済に対して
80%が信用保険でてん補されることから、現在特別基金の残高がある38協会のうち31
協会に、特別基金計391億3005万円が取り崩されることなく保有され続けることになる。
( 3) 特別保証から緊急保証への借換え
中小企業者が、特別保証に係る既往借入金をその残高と同額以内で借り換える場合、
協会は、当該借換保証に係る収支計算を特別保証会計に含めることとなっている。
一方、中小企業者が、特別保証付借入れを別の保証付借入れとまとめて借り換えた
り、借入額を増やすなどして借り換えたりする場合、協会は、当該借換保証に係る収
支計算を特別保証会計から外すこととなっている。
20年10月に緊急保証制度が創設されて以降、既存の特別保証付借入れから緊急保証
付借入れへの借換えが見受けられるようになった。そして、20年11月から21年3月まで
の間に、特別保証を含んだ保証債務から緊急保証(緊急保証以外の保険法第2条第4項
第5号に該当する中小企業者に対する経営安定関連保証を含む。)に借り換えられた保
証債務のうち約882億円が、同額以内の借換えでないことから、特別保証会計の対象に
ならない保証債務となっている状況となっていた。
が特別保証会計から外れる場合、協会に対する損失補償は、別途国の補助金により造
成された経営安定基金から行われることになり、更に特別基金が取り崩されることな
く協会に保有され続ける事態を生じさせることになる。
( 4) 改善を必要とする事態
特別保証のための特別基金については、今回の検査における試算においても特別基
金のうち391億3005万円は取り崩されることなく協会に保有され続けることが見込まれ
る状況となっている。
さらに、緊急保証制度が創設されて以降、特別保証から緊急保証等への借換えが行
われることで、更に特別基金が取り崩されなくなる事態も見受けられた。
しかし、現行の制度では、信用保証協会法施行規則や同規則に基づき改正された協
会の定款等により、特別基金は特別保証の収支計算に係る欠損の補てんにのみ充てる
ことができるとされていて、緊急保証に係る損失処理等には使用できないこととなっ
ている。
したがって、経済産業省において、以上の事態を踏まえて、特別基金の有効活用を
図るための方策を講ずる要があると認められる。
( 5) 発生原因
このような事態が生じているのは、経済産業省において、特別基金の相当部分が取
り崩されることなく協会に保有され続けることが見込まれるにもかかわらず、特別基
金の最終的な処理についての検討が十分ではなかったことなどによると認められる。
3 本院が要求する改善の処置
現在実施されている緊急保証の保証債務残高は多額に上り、今後、協会の代位弁済に
対する経営安定基金からの協会への損失補償のために、多額の国の負担が必要になるこ
とが見込まれる。
ついては、経済産業省において、17年度決算検査報告で記述した特別基金の最終的な
処理の方策として、特別基金の使途が特別保証による欠損の補てんに限定されている現
行の制度を改めて、緊急保証による欠損の補てんにも充当できるようにするなど、特別